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修論を書籍化し「ビジネス新教養としてのジェンダー」を伝える

2019年03月18日

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昭和女子大学 現代ビジネス研究所 研究員
豊島逸夫事務所 副代表
治部 れんげ

 一橋大学の経営学修士課程を修了してから、ちょうど1年になります。卒業後も自営で仕事を続ける中で、ひとつの区切りは、ワークショップレポート(いわゆる修士論文)に加筆して2018年10月、日本経済新聞出版社より書籍『炎上しない企業情報発信~ジェンダーはビジネスの新教養である』を出版したことでした。

 ワークショップレポートでは、ディズニー・プリンセス映画におけるヒロイン像の変遷を、社会・経済的な背景を踏まえて分析しました。1930年代、アメリカ社会に既婚女性の就労に否定的な考えを持つ人が多かった時代に生まれた「白雪姫」から、世界的な女性解放運動とその浸透を踏まえた「リトル・マーメイド」、さらに2010年代に入り、家族や国のために闘うヒロイン「アナ」や「モアナ」まで。ディズニーが各時代の社会規範、ジェンダー規範をいかに咀嚼し、先取りしてきたかを考察しました。

 書籍化においては、近年、企業が発信する女性像がソーシャルメディアで批判を受ける「ジェンダー炎上」の事例を大幅に加筆しています。テレビコマーシャルのみならず、インターネット上で自社製品・自社サービスを宣伝する手段が増えるに伴い、意図せず消費者の反感を買ってしまう企業の失敗例があとをたちません。背景には「男らしさ、女らしさ」の社会的な枠組み、いわゆる「ジェンダー」に関する理解と知識が欠けている共通課題があります。

 現実は既に動き始めており、例えば環境や社会問題、ガバナンスに着目するESG投資の「S」においても、ジェンダーは重視される項目です。公的年金基金を含む大手機関投資家も、最近1~2年、投資先との対話にジェンダーの視点を取り入れるようになりました。昨年12月には、電通ホールで外務省とカンヌ広告祭日本事務局共催の「ジェンダーとコミュニケーション会議」(写真)が開かれています。

 修論の書籍化を機に、自社の情報発信をジェンダーの視点で見直したいと考える企業向けに講演、研修、助言業務が増えてきました。面白いのは、女性だからジェンダー視点がある、男性だからない、というわけではないことです。より多くの日本企業に、損益計算書や貸借対照表を理解するのと同じような基礎教養として、ジェンダーについて知ってほしいと願っています 。

 (8回続けてきた本コラムは、今回で最終回です。ご愛読いただき、ありがとうございました)

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「ジェンダーとコミュニケーション会議」
外務省とカンヌ広告祭日本事務局共催(電通ホール)

治部 れんげ プロフィール

1997年、一橋大学法学部卒。日経BP社にて経済誌記者。2006~07年、ミシガン大学フルブライト客員研究員。2014年よりフリージャーナリスト。2018年、一橋大学大学院経営学修士コース(HMBA)修了。日経DUAL、Yahoo!ニュース個人、東洋経済オンライン等にダイバーシティ経営、女性のエンパワーメントについて執筆。現在、昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。東京大学情報学環客員研究員。日本政府主催の国際女性会議WAW!国内アドバイザー。2019年日本が議長国となるG20の公式エンゲージメントグループWomen20(W20)運営委員。東京都男女平等参画審議会委員(第5期)。公益財団法人ジョイセフ理事。一般財団法人女性労働協会評議員。著書に『稼ぐ妻 育てる夫』(勁草書房)、『炎上しない企業情報発信』(日本経済新聞出版社)等。2児の母。

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