受講生の声

秋山 優介さん
(2014年度入学)

相互学習を通じて、陳腐化しない思考力を養う

なぜHMBAに進学されたのでしょうか

陳腐化しない思考力を養い、自らの手でシナリオを作ることのできる人間になりたいと考え、HMBAへの進学を決めました。

将来経営的な側面から社会に貢献したいと考えた時、進学前の私は身の回りに起こる問題の本質を見極めることも具体的なアクションを起こすこともできず不甲斐なさを感じていました。アクションを起こすためには、きちんと論理を組み立て、物事の本質を突き止め、自分なりのアプローチを編み出していく必要があり、その力を付ける場としてビジネススクールが相応しいと考えました。

中でもHMBAに魅力を感じた理由は、深いレベルでの理論習得に主眼を置いているためです。ビジネスの世界において対処療法を学ぶ機会はたくさんありますが、自分の思考の拠り所を手に入れる機会はそれほど多くないと考えています。つまり、ある課題に直面した時、状況に応じて「何をすべきか」を知ることはできても、「いかに考えるべきか」は誰も教えてくれないということです。HMBAでの学びは、単に理論を知るだけでなく、理論の生まれた背景や適用可能性をじっくり考え、自分なりの物の見方や構えを確立する良い機会になると考えました。

入学後最も印象に残っている科目について教えてください

最も印象に残っている科目は古典講読です。

古典講読とは、社会科学に関する古典を読み解き、内容に関する要旨を書き、議論を行う形式の講義です。講義の狙いは、「読む」「書く」「論じる」というスキルを養いながら経営構想力を身に付けることです。私のクラスでは、アルフレッド・D・チャンドラー『経営者の時代 上・下』を読みました。

この講義が印象的であった理由を2点挙げます。
第1に、言葉を大切に扱う重要性を学ぶことができたためです。特に本の要旨を書く上では、筆者の意図を正しく読み取り、自分の意図を正しく伝えることが求められます。簡単に聞こえますが、実際に情報を正確に把握し、誰にでも伝わる文章、誤解を招かない文章を書くことは案外難しいものです。また正しく伝えるためには、自分の思考が十分に整理されていなければなりません。言葉はコミュニケーションの道具であると同時に思考の道具であることを深く考えさせられた講義でした。

第2に、現象を抽象化する意義を理解できたためです。この講義では学生主導で議論を行います。年齢も国籍も異なるメンバーの主張は一見バラバラで、全員の意見を1つにまとめるのは至難の業です。ここで必要なことは個々の主張の本質を捉えることです。メンバーの主張の根拠や論理を読み取り、抽象的に大本の「一」を掴むのです。ビジネスの現場でも大本の「一」を掴める人間は、そこから何通りもの具体的な行動に変換することができるようになります。したがって、現象を抽象化することはどのような境遇でも結果を出すために大切なスキルだと言えます。

今参加しているワークショップではどのようなことに取り組んでいますか

戦略ワークショップに所属し、個人的な問題意識に基づく研究を進めるとともに、担当の先生や他の学生との議論を通じて考察を深めています。戦略ワークショップは、4月から5月まで過去の先輩方が作成したケースブックの輪読を通して基本的な分析手法を学んだ後に、各自のワークショップレポートの進捗状況を報告していく形で進んできました。

ワークショップにおいて取り組んでいることは主に2点です。
第1に、個人的な関心に基づく研究です。私は物心ついた頃から「勝つ者がいかに考え、行動しているのか」ということに大変興味がありました。これをビジネスの世界に置き換えるのであれば、「勝つ企業がどのように次の一手を構想しているのか」ということであり、それを明らかにすることが研究の目的です。具体的には、ある食品メーカーが大幅なシェア低下という危機的状況を乗り越えて業績を拡大している現象に着目して、その要因を戦略的な視点に立って分析し、応用可能な示唆を見出そうとしています。

第2に、担当の先生とメンバーとの討議です。MBAの最大の価値は相互学習です。どれだけ思考力を養っても自分一人で考えられることには限界があります。自分の研究に対する周囲からの多面的な意見は私にとって大きな財産です。また他のメンバーからの研究発表についても、自分のことのように真剣に考え、分からない箇所については積極的に質問することを心掛けています。意見の異なるメンバーと膝を突き合わせて対話することでしか、自分の思考は深化しないと考えているからです。

現時点でどのようなキャリアプランを描いていますか

長期的には、少しでも日本経済の活性化に貢献できる企業家になりたいと考えています。そのためには、目の前で起きている現象を鵜呑みにするのではなく、背後のメカニズムを探り、より良くしていくための道筋を自分なりに構想することが不可欠です。まだまだ未熟ですが、周囲の人々の期待を裏切らず、またこちらからも刺激を与られるよう努力を重ねていきたいと思っています。

(2015年12月15日)