HUB-SBA MAGAZINE

2023年度 経営分析プログラム導入ワークショップの報告会が行われました

2023年08月24日

去る7月14日に本学のインテリジェントホールにて、経営分析プログラムの修士1年生による、導入ワークショップ報告会が行われました。この導入ワークショップは1年生向けに開講されている必修の演習科目で、3クラスに分けて一橋ビジネススクールが重んじる少人数教育を行なっています。当日は、各クラスの代表チームから、研究計画や先行研究の説明、今後の進め方についての報告があり、アドバイザーとして修士2年生の先輩4名が参加しました。


導入ワークショップAクラス代表
研究課題:「なぜ新規参入する際にコーポレートブランドを用いた広告が重要なのか」

ある市場への新規参入者がその市場において顧客獲得する上では、顧客獲得のために既存のプレーヤーとの競争が不可欠であるため、低価格が想定されます。ですが、コーポレートブランドを確立している企業においては、既存事業(本業)のプロモーションが、新規事業においても既存のコーポレートブランドに活用することの優位性が示唆されます。これに関して、先行研究ではコーポレートブランドを用いた既存のプロモーションが、自社の他製品に波及することを示しているので、この背景から「コーポレートブランドを冠していることで、既存の事業広告が新規事業の購買を促す」ということを、今後の研究で明らかにしていきます。

導入ワークショップBクラス代表
研究課題:「社会貢献活動が企業価値に与える影響-企業の災害復興支援はトービンqを上昇させるか」

東日本大震災をはじめとする未曾有の災害に対して復興支援を行っている企業は、そうでない企業に比べて、企業価値(トービンのq)※1は高いのであろうか。また、復興支援の内容によってトービンのqの変化は変わるのであろうか。先行研究で用いられている理論や結果は区々である。本研究グループは、小売業 、消費財一部に属する上場企業232社を対象にして、Preliminary Testを実施した。その結果、復興支援を行っている企業は、そうでない企業に比べて、トービンのqが高いという証拠は得られなかった。しかし、素早くできる支援、有形の支援、および義援金による支援を行った企業は、そうでない企業に比べてトービンのqが高いことが明らかにされた。今後は、サンプル数を増やし、企業が行う様々な復興支援活動が企業価値にどのような影響を与えるのかを分析し、またなぜそのような結果になっているのかを明らかにする予定である。

※1 トービンのq:株式市場で評価された企業の価値(株式時価総額と負債総額の合計)を資本の再取得価格(現存する資本を全て買い換えるために必要となる費用総額)で割ったもの。

導入ワークショップCクラス代表
研究課題:「経営者に帝国建設を許す意思決定主体との不透明な関係性とは」

「関係論的」視点に基づく比較事例研究を通じて、帝国の建設※2に至る意思決定の原因を探ります。先行研究では、経営者、取締役、株主の三主体について関係論的な捉え方はしていませんでした。意思決定機関の三主体の関係性に注目することで、帝国の建設の事象の背景や意味を、これまでよりも深く理解できると考えています。「関係論的」な視点は、導入ワークショップで学んだ『知的眼思考法』に書かれていた概念で、こうした導入ワークショップで学んだことを活用しています。

※2 帝国の建設:経営者個人の興味関心追及のために、株主還元や利益追求を軽視し、事業拡大や多角化を行うこと。

担当教員コメント
熊本方雄 先生

いずれのグループも独自性のある問題意識から、大変興味深いリサーチクエスチョンを設定されていました。
先行研究は想定していたよりも網羅的に、かつ詳細に読み込んでおり、先行研究の中にご自身の研究が位置づけられるかというところが明確になっていました。おそらくですが、実際に分析していくにあたって、インタビューやアンケート調査、データを収集する中で、やりたいことと、できることのギャップが出てきます。今後は、このギャップを埋めていくような経験もしていただきたいと思っています。

角ヶ谷典幸 先生
袖振り合うも多生の縁といいます。SBAの絆を大切にしていただきたいと思います。どのチームも非常に努力されていて、示唆に富む報告内容でした。4月から多くの課題をこなし、切磋琢磨してきた甲斐があったのではないでしょうか。基礎ワークショップも大忙しになるとは思いますが、研鑽を積みましょう。

酒井健 先生
本日登壇されたチームの皆さんは、本当によく準備されていた研究発表だったと思いました。今回登壇されなかった皆さんは、次回は代表発表をするんだという気持ちで、研究に取り組んでもらいたいと思います。当たり前のことを確認するのではなく、驚きに満ちた研究を目指して、引き続き頑張ってください。


★先輩からのアドバイス★
プレゼンについては、誰に向かって何を伝えるかを工夫すると良いということと、研究計画に関しては、研究者の目線だとそのままでよいが、実務的な意義みたいなことを考えるともっと深堀してもよいと思う。また、研究の肝となる事柄についての調査をするときに「予想はどう考えているのか」、「仮説においての裏付けや事実確認の調査はしているか」などの確認や、自身もマーケティングのゼミにいるので何かあれば相談に乗ります、というようなサポートもありました。

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