去る2月16日～21日、経営分析プログラムの学生を対象とした海外研修が行われ、学生5名と教職員4名がベトナム・ハノイを訪問しました。本研修プロジェクトは、経営管理研究科が主催し、三枝匡経営者育成基金から一部支援をいただき実施しているものです。本研修では、1）現地における経済発展の実際を体感するとともに、2）日系企業および現地企業・大学等における交流を通じてグローバルな事業展開・人材育成の要諦に関する理解を深め、3）将来グローバルに活躍する経営人材となるための能力を涵養することを目的として、今年度はASEAN諸国の一角として成長が期待されるベトナムの首都ハノイを訪れました。現地では、日系企業とベトナム企業を訪問し、双方からベトナム経済についての話を伺いました。ハノイ貿易大学では、本学商学部の卒業生で、同校で教鞭をとられているグェン・ビックフェ先生を訪問しました。

現地訪問に先立ち、事前学習として、ベトナムの経済事情や各訪問先企業のデスクリサーチを行いました。また計3回の勉強会を開催することで、研修参加メンバーの目線を合わせ、質問事項の事前準備を通じて問題意識を共有し、ベトナムや訪問先企業についての理解を深めていきました。

日本出発前には、参加者の厚意により成田国際空港の関連施設を訪れることができ、視察を行いました。民間航空需要は、特にアジア太平洋地域の新興国の経済成長を背景として、将来的な拡大が見込まれています。今回訪れたベトナムも、日本の航空運送に大きな影響を与えるであろう国の1つです。視察では、空港施設を俯瞰しながら、開港の歴史とオペレーションの全体像について学ぶと共に、航空需要の拡大もふまえた空港の将来の姿について考えることができました。

ハノイでは、まずイオンモールや数多くの店舗がひしめき合うドンスアン市場を視察して現地の商習慣を体感した後、本学の同窓会組織である如水会のハノイ支部に属する日系企業の方々と交流を行い、日本との商慣行の違いに関する理解を深めました。さらにその翌日には、ジャポニカ米を手掛ける現地企業のAn Dinh社を午前中に訪れた後、午後にはダイキン エアコンディショニング ベトナム社を訪問しました。研修最終日はAHT Tech社を訪問し、オフショア開発の一大拠点であるベトナムのIT企業の現状を視察しました。同社は、ソフトウェアなど多様なITサービスをクライアント企業のビジネスに実装する、いわゆるITベンダーと呼ばれる事業者です。CEOとの意見交換を経て、社員数名に仕事のやりがいについてインタビューしてみると、同僚との良好な関係性という声が一様に聞かれました。本研修の醍醐味である、現地のビジネスについて直接自分の目で確かめられる貴重な機会となりました。なお、ベトナムでは企業でも昼食後に昼寝をする文化を重んじているということを事前に学んでいましたが、IT業界でグローバルに展開する先進的な彼らもベトナムの伝統的な文化を大切にしているようでした。午後からは、ハノイ貿易大学の日本語学部で教鞭をとる、本学商学部卒業生のグェン・ビックフェ先生を訪問しました。同校では、日本語を要するビジネスシーンで即戦力として活躍する人材の育成を目指しています。特に興味深かった話として、日本語の文法や会話だけでなく、日系企業におけるビジネスマナーもときに教えるという点があります。真にグローバルで活躍することを念頭に置いている教育機関であるからこそ、言語だけではなくビジネス文化を学ぶ重要性を認識していることがよく理解できました。

本研修を通じて、ベトナムという国が持つ経済成長の実態を体感するとともに、ベトナム市場におけるさらなる事業展開に向けて試行錯誤を繰り返す企業活動の様子を学ぶことができました。また、本学如水会の先輩の話として、グローバル人材の素養を身につけるには、現地の人たちとの交流に努力を惜しまない姿勢が必要だといいます。スタッフとベトナム語で交流するだけでなく、現地で流行しているベトナム語の音楽を聴いたり、彼らとの多様な交流を通じてベトナム文化に溶け込む姿勢が、業務においてもスタッフとのスムーズなやりとりにつながるのであろうと推察できました。このような日常における文化的な交流が、地元にいち早く溶け込むうえで必要であり、ビジネスを展開していくうえで大変重要であると知ることができました。さらに、ベトナムの人々は、自分たちで道を切り開かなければならないという自立的な傾向が強く、こうした熱量がベトナムのビジネスを後押ししているとも感じられ、現地視察ならではの大変貴重な機会となりました。

訪問先：
成田国際空港 ／ AEON Mall Long Bien ／ An Dinh ／ ダイキン エアコンディショニング ベトナム ／ AHT Tech ／ ハノイ貿易大学