HUB-SBA MAGAZINE

強い課題意識と明確な目的意識を持ってMBAに臨む

2025年05月20日

大坪 秀泰さん

2025年3月修了
大坪 秀泰さん

理論と現実の往復運動/会社の新しい組織づくりに生かす

私は企業派遣で一橋ビジネススクールの経営分析プログラムに入学しました。これまで保険会社で営業の仕事をしていて保険については日々の業務の中で詳しくなっていくのですが、逆に言うと保険のことは分かるけど、保険のことしか分からないような状況に強い危機感を感じていました。このままではビジネスパーソンとして価値がないのではないかと思い、経営リテラシーを体系的に学びたいと考えたのがMBAを目指したきっかけです。修了後、会社に戻ったときに使える能力を身につけたいという目的もありましたので、「理論と現実の往復運動」というコンセプトに強く惹かれて一橋ビジネススクールを志望しました。

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M1基礎ワークショップ報告会での発表の様子

在学中の研究テーマは人の行動のメカニズムで、組織の中に長年定着しているような行動様式に関心を持ちました。それは明文化されたルールなどで統制されていないような行動様式です。とりわけ「企業不祥事」を対象事例として取り扱うことにしました。誰に聞いてもそれはやってはいけない、と答えることにも関わらず長年定着してしまっているのが不思議だなと思いました。組織に新しく入ってくる者がその行為を見て、悪いものだと「思ったか」、「思わなかったか」はわかりません。ですが、それを受け入れて自分も実践していくというところに、不分律的な行動が定着するメカニズムのようなものが隠れているのではないかと考えました。このことの要因は「個人」にはないと考えていて、「組織」の中の社会的な相互作用で上司と部下、同僚と同僚など、この組織の登場人物たちによって徐々に形成されていくと思っています。例をあげると、仕事の中で自分がやった行為が上司から褒められた時などです。上司から「できるね」と言って評価されると、不正行為であっても正当化されて伝承されていくようなプロセスで観察することができます。本当だったら良いことの方に使っていけばいいのですが、意図していない方向に機能してしまうところに関心を持ちました。

フルタイムのMBAプログラムを最大限に活用

坪山雄樹先生(経営管理研究科准教授)のワークショップに入る前に、先生の論文を読んでいました。先生は企業の本音と建前の世界観に関心を持たれていて、すごく生々しい人間たちの組織の中の社会的な相互作用について書かれていて面白いなと思いました。大人が大真面目に不正を起こしたりするんです。本当に誰もが一生懸命に考えて、合理的だと思ってやったにも関わらず、出来上がったものは不正行為だったりするわけです。こうした「企業の本音と建前が生み出す世界観」というものについて坪山先生が研究をされていて、私の研究課題とも相まってダイレクトに影響を受けました。日常の指導では、自分たちで気づかないことやアカデミアではそういう視点で捉えるんだということをクリティカルに指摘してくれるので、学術論文の執筆は初めてでしたが、適切にリードしていただいたと思います。いつもちょうどいいタイミングでこういう研究論文があるよ、こんなのもあるよと、自分が悩んで立ち止まっている時にそれを見越してなのか、解決につながるようなアドバイスをくださる、そういうスタイルの指導でした。振り返ってみると論文執筆中に2度ほどダメかもしれないと思ったことがありましたが、そんな時でも先生や仲間が自分のことのように考えてくれて、そこで気づきを得て論文が完成しました。この2年間は本当に充実していました。こんなに勉強したのは大学卒業以来、いや人生で初めてくらいです。本をたくさん読んだし、MBAの後半では会社にいたときに持っていた課題意識を徹底的に深掘りできるような時間でした。そこには知見を持ち合わせた先生がいらしたということもあり、とても有意義な時間で本当に楽しかったです。

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ベトナム海外研修で地元企業へ訪問

フルタイムなので課外活動も充実していて学内の活動だけでなく、一橋ビジネススクール戦略的経営者研究会の活動で、2024年7月には自身で企画を立ち上げ「M&Aの要諦」というテーマで、新貝康司氏(株式会社新貝経営研究所代表取締役)をお迎えしてご講演をいただきました。また1年次ではベトナム海外研修、2年次ではカンボジア海外研修にも参加させていただきましたし、千代田キャンパスの経営管理プログラムや金融戦略・経営財務プログラムのファイナンスの講義も受講して、フルタイムのMBAで提供される機会を十二分に活用させていただきました。もちろん大変でしたけど勉強漬けというだけではなく、課外活動や家族と過ごす時間も取れました。苦しさの中にも必ず楽しさがあり、あっという間の2年間でした。

受験生の皆さんへ

私はこの春にMBAを修了して会社に戻り、経営企画部に配属になりました。弊社はグループ内の他社との合併を予定していて、そのための合併準備室というところで合併の交渉や実務を担っています。まさにMBAのコーポレートガバナンスやコーポレートファイナンスも含め、学んだことを総合的に発揮できる機会です。個社同士の文化やDNAがあって、それが融合した時に新しいものを作っていくのですが、そこで一橋で学んだことや研究したことを生かせるのではないかと思っています。

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これから入学を検討されている方へお伝えすることとしては、全日制のプログラムは効率的にやれる自由度のある環境です。正直に言うと「単位だけを取って卒業」ということもできるかも知れませんが、それでは本当にもったいないです。せっかくフルタイムで学べる機会ですし、課外活動のプログラムもあり、教授陣も同窓生も優秀な人ばかりでこんなに恵まれた環境はないと思います。学びに集中できる2年間は、一橋ビジネススクールが提供してくれるものをフルに活用して過ごされたほうが、ご自身の将来にとって実になるものだと思います。私からは、「強い課題意識と明確な目的意識」を持って臨んでくださいとお伝えしたいです。「強い課題意識」は、深刻なほど良いと思っていて、このままでは駄目だと絶望的な課題意識を持っている方、あるいはそれを克服するために一橋ビジネススクールでの学びに明確な目的意識を持っている方は、一橋ビジネススクールが提供してくれるあらゆる施策をフル活用して学び、実務に生かしていける知見を得られると思います。

(2025年5月)

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