2025年05月13日
2025年3月修了
中田 宗孝さん
私は新卒で銀行に入行して、6年間法人営業を担当してきました。社会人になったばかりの頃は、いずれ銀行を退職した後は、そのまま実家に帰って家業を継ごうと考えていました。ですが、銀行での業務を通じて、実家の事業を継ぐにあたり経営の知識がないまま将来的に経営者となるということに対して大きな不安を覚えました。そこで2年間集中して経営について学び、経営者になるべく手腕を鍛えられるということで一橋ビジネススクールのMBAを目指しました。
一橋ビジネススクールの経営分析プログラムを選んだ一つ目の理由は昼間開講で2年間集中して勉強ができる、そしてキャンパスのある国立市には自然豊かな環境があるからです。私は4人家族で子どもが2人います。子どもを育てる環境を考えたときに、国立市に住んでキャンパスに通うのが好ましいと思いました。また、教育方針として「理論と現実の往復運動」とあるように、理論を重視して経営を学べるところが魅力的でした。私自身、これからの社会人人生で経営を実践する機会は多くあると思っています。ですので、この2年間は「理論(基礎)」を集中して学ぶ、そして考え方を身につけるほうが長期的にはプラスだと感じました。加えて一橋大学のMBAは国内最高峰のビジネススクールと言われており、互いに刺激しあえる志の高い優秀な同期と学べる環境であるだろうと思い入学を決めました。
ワークショップレポート(修士論文相当)の研究テーマは、「レジリエンスにおける組織要因」について研究しました。会社の経営が厳しくなった時に、社員同士のコミュニケーション、リーダーシップ、そして社会や同業団体などとの関わりが経営の立て直しにどう影響したかということを、業歴が長い企業(100年以上)と短い企業(20年未満)を比較して、定性的に分析するという研究をしました。具体的には、ホテル業界で企業がコロナ禍において外的要因によって経営が厳しくなったところから、どういう風に回復していったかということを調査しました。
分析データを比較した結果は、どちらの企業も社内の危機を感じやすいのは現場の人たちでした。その現場の声を経営層が取り入れられる企業というのは短期、長期に関わらず「組織の柔軟性」がありました。何か変化があったときに、経営層がそれに合わせた対応ができるということです。つまりその環境に合わせて、動的に戦略を変えられる企業というのは、レジリエンスを発揮しやすい組織体系ということです。もう一つは、雇用継続に対する意思表示というのが意外と大事だということが分かりました。特にコロナ禍では、リストラしないと従業員にしっかり伝えるということがモチベーションを高め、企業としてはレジリエンスを発揮しやすくなると思いました。そもそもこの研究テーマにしようと思ったのも、私の実家が創業100年(2025年3月現在)になるインフラ関係の建設会社で、残念ながら私の代は父や祖父の代より経営環境的には良くはないと思っています。そういう厳しい状況になった時のことを考えてこの問題意識を研究テーマとして取り上げました。建設業は成熟産業なので、M&Aなどを除けばここから売り上げをいきなり倍にすることは難しく、自社の経営において最初の目標は、地道に事業を継続していくことだと思っています。また、経営層は自分の手で動かすことはできないので、従業員に最大限に能力を発揮して頂いて業績を上げていく、そして次の世代にバトンタッチしていくというのが私の一番の目標です。
在学中の学びとして、いくつか印象に残っていることがあります。昨年の夏に経営警理研究科が主催し、三枝匡経営者育成基金から一部支援をいただき実施しているカンボジア海外研修プロジェクトに参加した際に現地の鶏卵業界で大きなシェアを持つ会社を興されている一橋の卒業生に会いました。その方は、もともとは一橋大学の農園サークルに所属していて、そこから興味を持ってカンボジアに渡り起業したということでした。そのバイタリティーにはすごく刺激を受けました。一橋大学の人の深さを知るとともに先輩方の築いてきた絆を感じました。教員の方々においても、ご自身の研究などで大変お忙しいのにも関わらず、学生たちに何かを学び取ってもらおうという圧倒的な熱意や高い志を持って授業に臨まれる教授陣が多くいらっしゃるというのも魅力だと思います。「こんなに学生のために力を割いてくださるんだ」と思わされるほどの先生のコミットの高さ、一橋ビジネススクールのレベルの高さというのを感じて、ここで学ぶことができて良かったなと思いました。本当に学びたいという気持ちと目標があれば、この一橋に入学することを強くお勧めしたいと思います。
(2025年5月)