HUB-SBA MAGAZINE

横田一貴さんが組織学会高宮賞(論文部門)を受賞しました

2025年07月09日

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6月21日・22日、九州大学で開催された2025年度組織学会研究発表大会において、本学の大学院を修了した横田一貴さん(横浜国立大学大学院国際社会科学研究院講師)が、栄えある組織学会高宮賞(論文部門)を受賞しました。この賞は、40歳以下の若手研究者の優れた論文に対して与えられるものであり、経営学の分野で高い権威をもつものです。

横田さんは、2018年に一橋大学商学部を卒業した後、大学院経営管理研究科に進学し、修士号、博士号を取得されました。

今回、受賞した研究論文は、「戦略的撤退がもたらす社内知識の移転」に関する組織論の研究です。企業がある事業から撤退する場合、その事業に携わっていた人材のもつ知識はどうなってしまうのでしょうか。一般にはそうした知識は散逸してしまい、別の事業に移転するようなことはないと考えられてきました。常識的に考えれば、新しい事業ではまた新しい知識が必要になるため、以前の知識はその組織から次第に忘れられていくはずです。

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組織学会会長、青島矢一先生(右)とともに

しかしながら本研究が特許データを使って明らかにしたことは驚くべきものでした。ある企業がある事業から撤退し、配置転換が行われた際に、撤退した部門が取った特許がその後に社内でどのくらい使われたのかを統計的に分析したところ、実は撤退後にもそうした特許の利用は増加するという傾向が明らかになったのです。これは雇用の維持を目的として配置転換であっても、それが社内の知識転換を促進する正の効果をもつことを意味しています。ここから示唆されることは、企業が撤退する際に、事業を売却したり、子会社化するのではなく、むしろ社内で人材の配置転換をすることが、組織内で重要な知識を維持することにつながるということです。これは企業に対して安易なリストラ策の弊害を戒めるものであり、横田さんの研究はこれまでの経営学の常識に対して、大きなインパクトをもっています。

経営学研究のさらなる発展に向けて、横田さんの今後の御活躍を祈念いたします。

一橋大学大学院経営管理研究科(HUB)は、日本における商学・経営学研究者の教育の拠点として、これまで数多くの研究者を輩出してきました。近年も本学で教育を受けた若手研究者が、国内外の学会で目覚ましい活躍ぶりを示しています。東京商科大学の伝統を引継ぎ、日本で最も歴史ある商学・経営学教育機関として日本の研究をリードしてきた本学は、その教育を通じて幾多の優れた実業家のみならず、数多くの優れた研究者を全国の大学に輩出してきました。その多くは、全国各地の商学部・経済学部等の大学教員として活躍しています。今後も社会科学分野で大学教授を目指す若き英才に対して、一橋大学大学院は魅力ある教育を提供します。

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