2025年12月15日
みずほ証券寄附講義のご支援を得て毎年行っている海外研修プロジェクトは、今年で16回目を迎え、8月25日から9月1日の日程でドバイ首長国を訪れました。今回はアラブ首長国連邦の経済の中心となっているドバイを「未来志向の戦略都市」として捉え、日本から進出している企業や政府機関、現地の大学や財界人などを訪問しました。本研修には、経営分析プログラムの学生11名と教員3名、職員1名の総勢15名が参加しました。事前学習ではドバイの多様性に富んだ多文化社会や経済についての知識を深めました。訪問先についても参加者で分担をして調査し、全員で共有するとともに、質問事項を準備して、訪問に臨みました。
今回の研修の目的は、ドバイの地政学的なリスクと機会を学び、それに基づく国家としての戦略企画や制度設計を理解することでした。ドバイは石油依存から脱却し、観光・金融・ITといった非資源型産業へと経済転換を果たした未来志向の都市であり、訪問先でのディスカッションを通じて示唆を得ることで、日本の成長モデルへの応用を考える機会となりました。
ドバイは、中東にありながらも石油の産出量は少なく、その経済は中東・アフリカ・南アジアを結ぶ地理的利点を生かした物流や人流のハブとして発展してきました。また、ソブリンウェルスファンドを中心とする金融や世界一を誇る建造物による観光を国として戦略的に強化しており、近年ではスマートシティ政策やフィンテック・グリーンテック分野への積極投資を行い、国際的存在感を高めています。研修で訪れたJETROやJBICでは、そうしたドバイ経済の概観の解説や、ドバイに進出する日本企業へのサポートが輸出支援からサプライチェーン全体の支援やプロジェクトファイナンスへと役割が変化してきている現状について説明を受けました。また、American University of SharjarやSParkでは、次世代を担う教育や新産業創出の取組みを視察。恵まれた研究環境に羨望を抱きながらも、同世代として活発な意見交換を行いました。
今回の訪問先の複数において、王政国家であるドバイでは意思決定が極めて迅速に行われることや、長期ビジョンに則った政策や戦略が可能であるとの話が聞かれ、「次の世代に何を残すかを本気で考えている」という言葉が強く印象に残りました。また、人口の9割を外国人が占める中、自国文化の保護と外部活力の活用の両方に努め、「ともに成長を続けていく」という'プラスサム思考'を感じることができました。いずれも現地を訪れ、直接見聞きすることで得られる貴重な知見であり、今回の研修は参加者一人ひとりにとって大きな財産となりました。