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「財務会計」ゲスト講師・株式会社ストラテジックキャピタル 代表取締役 丸木強氏/株式会社ストラテジックキャピタルの運用方法について

2026年08月24日

経営分析プログラムの春夏学期に開講された「財務会計」(担当教員:円谷昭一経営管理研究科教授)では、財務会計の基礎的な知識の修得に加え、会計情報の分析(財務分析)や会計情報と資本市場とのかかわりなどについても学習することを目的としています。7月13日にはゲスト講師として、アクティビストファンドを運用している株式会社ストラテジックキャピタル 代表取締役 丸木強氏をお招きしました。アクティビストは、民間の独立系シンクタンクによると「適切な対話を通じて中長期的な企業価値向上を促す、市場改革の重要なパートナー(プレイヤー)」として位置づけられています。日本は1990年代のバブル崩壊以降、経済が低迷し、GDPも95年からほとんど増えていないのが現状です。そんな中、日本経済を盛り上げていくべく、企業との対話を続けているストラテジックキャピタルについて、今講義では「財務会計」の視点から、会社経営陣との対話や提案などの企業活動についてお話を伺いました。講義内容から一部抜粋してご紹介いたします。

「日本経済を元気にしたい」という思いからスタート

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私が代表取締役を務める、ストラテジックキャピタルは、ESG課題の解決を通じた企業価値向上を目指すアクティビストファンドです。この会社を始める前までの話をすると、大学卒業後、野村證券に入社して、主に日本企業や政府関係機関の資金調達案件の引き受けや大型民営化、企業のIPO、邦銀への資金注入に際しての政府関係機関のアドバイザーなどを行っていました。また、米国企業の日本の上場会社に対する公開買い付け代理人などの業務も担当していました。当時、民間企業から中央官庁へ出向する機会があって、経済産業省で高校時代の同級生であった村上世彰さんと再会したんですね。その時に「今の日本経済は元気がなくてよくないな」という話をしたのを覚えています。日本企業を元気にするために、経営者にアドバイスをしようとしても証券会社の社員や官庁の役人が何を言っても改善されることはないので、株主として言わなければ経営者は変わらないと思い始めたわけです。そこで、投資家から約30億円を集めて、1999年に村上さんといわゆるアクティビストファンドの会社を始めました。投資家からの資金で、投資先企業の株を数パーセント購入して、企業価値が上がるように経営課題の改善などを提案しに行っていたのが始まりです。2006年には運用資産としては、5,000億円近くまでいきましたが一旦終わらせて、12年に株式会社ストラテジックキャピタルを設立しました。

ストラテジックキャピタルでは、どんな会社に投資しているのか

今講義の「財務会計」に近い話で言うと、ビジネスがあまり大きくぶれない会社です。例外もありますが輸出の比率が高かったり、為替の変動で収益がぶれてしまうというのは不安定な会社になるかもしれません。また、『成長企業には投資しないんですか』という質問をよく聞かれるのですが、成長企業というのは元々バリュエーションが高いんですね。ですので、我々が投資して経営改善の提案をすることによって、さらにバリュエーションを高めることができるかといったら、確信が持てないのであまり投資対象にはしていません。

<原則として、以下のような特徴があり、本源的価値と比較して株価が割安に放置されている会社に投資>
・キャッシュフローが安定
・高すぎる自己資本比率
・金融資産等を過剰に保有
・不採算事業が存在し資本コストを超えるリターンを生んでいない
・IRが不十分
・取締役候補・報酬の決定方法、買収防衛策などコーポレートガバナンスに改善の余地がある

"ガバナンスウォッシュ(Governance Washing)"とは、コンプライ(comply)するふりをすること

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コーポレートガバナンスとは何かというと、株主利益の最大化という株式会社の目的を達成するための「規律」または「仕組み」と捉えています。これについて経営者の一部では、理解されていない方もいらっしゃると感じています。コーポレートガバナンス・コードは東京証券取引所のルールで、このコードにはいろいろな規則や行動指針があります。ほとんどすべてのコードについて「順守します」と回答している会社が多いのですが、それはコンプライするふりをしている"ガバナンスウォッシュ(Governance Washing)"の会社も含まれていると考えています。

コーポレートガバナンス・コードは15年に導入、18年と21年に改訂されて、今年3回目の改訂が予定されています。企業の経営者の中には、実際には趣旨を理解していないとか、順守しているふりだけをしている方も一部には存在していますが、23年の東京証券取引所の「資本コストと株価を意識した経営」の要請後には、だいぶ変わってきているとは思います。特に時価総額の大きな企業は良くなってきている気がしますね。

しかし、コードは順守すると表明していても、実態としては例えば、指名委員会の委員長が社長で年に一回しか開催しないという会社もあります。また、ROE5%目標とか、ROE8%を目標とした経営計画でもその達成時期が10年後になっていること等があります。後者は、目標達成を設定している時期には現在の取締役は全員いなくなっているという無責任な計画を立てている会社ということです。"ガバナンスウォッシュ(Governance Washing)"は、私が作った造語ですが、このような会社を私はそう呼んでいます。

また、投資先企業の社外取締役の役割については、平時においては少数株主の利益の保護、株主価値の毀損を防ぐことだと思っています。もちろん、会社の価値を上げてくれるような素晴らしいアイデアだったり、ビジネスオペレーションについての提言などを社外取締役として貢献してくれているのであれば、我々はウエルカムです。ですが、社外取締役にビジネスのプロは少ないわけなので、その代わりに事業投資で自社の企業価値がどれだけ上がるのか、株主にどんなメリットがあるのかを、取締役会で質問してほしいです。コンプライアンスについても、不祥事が起こった後に原因究明と再発防止はどうすべきか、そういった点で社外取締役が機能していると良いと思います。

投資戦略とアクティビストキャンペーン

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投資をする会社と面談開始から半年ぐらいは、経営の改善についていろいろ提案をしますが、経営陣がなかなか動いてくれないなという時は、アクティビストキャンペーンを行います。具体的には、法令において株主に認められた権利として株主提案権を行使する場合があります。さらに株主提案を行った会社については、「こんな課題があって、こういう提案をしています」ということを特設ウェブサイトや新聞広告で公開しています。我々としては、会社にどういう問題があるかを知ってほしいし、それを改善するために他の投資家にも賛同してもらいたいと考えています。

アクティビストに対する批判もありますが、経営が上手くいっていない場合は、「こうしたら経営が上手くできるのではないか」と言うのはごく普通の流れではないかと私は思います。しかし、今年の6月の株主総会(3月期決算企業)で株主からの提案が通ったのは2件だけだということで、実際は株主提案の可決はなかなか難しいのです。

我々は企業から報酬を直接貰うのではなく資金を投入して株式を取得し、経済が循環するように正しいことを言っていると思っています。つまり、株主の立場から投資先企業のガバナンス等の改善を促し、株主価値を向上させることを目標としているのです。事実、当社の投資先はほとんどが株価のバリュエーションが上がっており、しかも当社が売却後も継続して上昇しています。ですので、経営者もアクティビストを毛嫌いすることなく、経営について課題があるのかな?と気づいてほしい。最終的には改善したほうが良いかなと、動いてくれることを期待しています。

株式会社ストラテジックキャピタル 代表取締役 丸木強氏

野村證券株式会社入社後、主に日本企業や政府関係機関の資金調達案件の引受、大型民営化企業のIPO、邦銀への資金注入に際しての政府関係機関のアドバイザー、米国企業の日本の上場子会社に対する公開買付代理人などの業務を担当
1999年、株式会社M&Aコンサルティング(後のMACアセットマネジメント)の創業メンバーの一人として、日本初となるアクティビストファンドの運用に従事
2012年に株式会社ストラテジックキャピタルを設立、代表取締役に就任、同年12月からアクティビスト戦略のファンド運用を開始
東京大学法学部卒、国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(ICGN)メンバー

株式会社ストラテジックキャピタル

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