在学・修了者の声

青山 顕さん
(2023年3月修了)
(中央省庁勤務)

MBAで学び、政府と民間企業をつなげる役割を担う

同期の中で競争意識を持って取り組み、切磋琢磨

私はこれまで財務省と金融庁で、政府資金や金融機関によるファイナンスを通じた事業転換・事業再建等の支援に携わってきました。MBA修了後も、市場の変化に対応しようとする法人の組織再建策を考え、法律や予算に落とし込む仕事に取り組んでいます。とりわけスタートアップ、イノベーション創出、公的インフラ整備など、新たなルールを必要としたり将来を見通しにくい分野は、民間金融だけではリスク負担が難しいので、政府の出番があります。良い仕事をしようと思うなら、企業活動や経営の論理をきちんと分かっていなければいけないな、という思いが根底にあり、それが一橋のMBAを目指したきっかけです。

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在学中の講義はどれも印象に残っていて、いい意味で同期の中に漂う競争意識に背を押され、切磋琢磨していたと感じています。経営分析プログラムには、社会人学生のほかにも、学部新卒や留学生と、さまざまなバックグラウンドの人たちが共に学んでいます。特に社会人学生は、経験や業界知識が豊かな得意分野を持っています。今日のテーマだとあの人が一番得意だろうから、詳しく調べて良い質問をしよう、今日は質問が集中しそうだけどなんとか打ち返すぞ、といった心持ちで講義に臨み、お互いに楽しんでいましたね。実務家としてどう思いますか?と先生から話を振られることもありました。新卒の人たちは学生らしく、講義で学んだ理論を「なぜそのまま実務で実践できないのですか?」とピュアに尋ねてきます。そうして問いかけに答えるうち、社会人生活で忘れてしまっていた視座を何度も思い出させられました。いろんな立場や経験から意見を交わし、思考を巡らせてこそ、学びを深められるのだと思います。

在学中の研究テーマは、
「政府の産業投資による長期リスクマネー供給の収益性再考」

政府には、産業投資という制度があります。これは、リスクが高くて民間だけでは資金を供給しがたい政策分野に、政府がリスクを取って長期投資する仕組みです。一般的に、リスクが高いほど投資のリターンは大きくなりますから、投資したプロジェクトの成功は、産業支援の奏功とともに収益をもたらします。しかし、そこにはジレンマにも似た論点があって、産業投資は成功するほど民業圧迫の批判を受けやすく、市場における政府の役割は何か、収益性の追求はどこまで許容されるべきか、議論が尽きないところです。政府の仕事においては、政治家、研究者、市場参加者、さらには国民に向けて説明を尽くすことが大事です。先ほどの「国が儲けていいのか」という問いにも答えていかなければなりません。そこで私は、自身も関わってきた産業投資という仕組みを分析し直してみようと思い立ち、ワークショップレポートの研究テーマとしました。産業投資は、先人たちが知恵を絞り、日本の高度経済成長期を支えた歴史ある政策でもあります。その役割は、産業構造や金融環境の変化に伴い変わっていないか。過去の投資収益を次の産業・企業への投資に回してチャンスを繋ぐには何が必要か。一つひとつ腰を据えて考えぬく機会を一橋MBAで得られたのですから、制度・政策の合理性や課題を後進にも伝えていきたいと思っています。

一橋の教育方針「理論と現実の往復運動」は金言

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予算や法律は、たとえ企業支援が目的であっても、ビジネスの現場から一定離れたところで作られています。他方で、学術的・専門的な理論だけでも成り立たないものでしょう。つまり、私自身はまさに「理論と現実」の狭間に身を置いており、いかに両者の間を滑らかに調整するかが仕事の要諦なのだと思っています。一橋MBAでの2年間の中で、このことは政府と企業、経営陣と株主、上司と部下、あらゆる対置においても通じるものだと感じました。民間企業に勤める社会人の方々をはじめ、自分と違う視座を備える多様な人とともにMBAで経営学を学んだことで、改めて自分と組織のポジションについて理解を深め、殻を破れたと思います。そういった意味で、一橋の教育方針「理論と現実の往復運動」は、けだし金言だと思っています。

後輩へのメッセージ

img_detail15_03.jpg同期の仲間と共に

与えられた学びの時間を、これでもかと使い尽くしてください。私は社会人生活の中でMBAに取り組んだので、なおさらそう感じたのかも知れないのですが、経営分析プログラムには、フルタイムで「学生」になれる強みがあります。勉学・研究にどっぷり浸かることができますし、平日昼間の勉強会やフォーラムに参加したり、ビジネスコンペに挑戦したり、夜を徹して読書もできます。声がかかったら何でも引き受けて、学びとった知見を試してみてほしいですね。尻込みする気持ちは誰にでもあると思うのですが、それに流されてはもったいない。時間という環境資源を余すことなく使い、一橋MBAで良い仲間と高めあってほしいと思います。

(2024年4月)