在学生の声

中川晶子さん

中川 晶子さん
(2022年度入学)

創造的な思考力を身につけ、戦略の幅を拡げる。
観光活性事業において社会に貢献したい

事業の高度化で感じた学び直しの必要性

私は旅行会社に勤務しており、全国の自治体と連携しながら観光を基軸とした地域活性化事業に長年取り組んできました。昨今自治体では、人口減少や産業衰退等の課題に対し、各ソリューションを個々に実施するのではなく、地域をひとつの企業に見立てた「観光地経営」を行う手法が主流になってきました。官民や学校、金融などさまざまなステークホルダーと連携するため、議論の場では経営全般の知識や実績が求められます。その中で、自分自身には財務や金融の知識が欠けていることに課題意識を持っていました。これらの実践的な知識を身につけることができたら、地域に提案できる戦略の幅が拡がって、もっと社会に貢献できるのではと考えたのがMBAを目指した動機です。一年目は、戦略や組織、財務、会計など経営について体系的に学びました。一度社会に出て、MBAに入ると、理論をどのようなシーンで使えるか自身の業務に当てはめて考えることができる実感を持っています。理論の活用について、高い解像度でイメージできるので、経営観を養いながら学びを吸収できていると思います。

戦略の組み立てに重要な思考プロセスを養う

一橋MBAには「理論と現実の往復運動」という特色ある教育方針があります。経営の課題について「その本質は何か」という問いを理論に当てはめて考察します。現実における理論の限界値を創造的に解決するには、深い思考力が求められます。先生方からの実務経験に裏打ちされた教えや問いは、「こう考えれば良いのか!」と目を見開かされることが多く、気づきや納得の連続でした。
例えば、円谷昭一先生の財務会計では、財務諸表の構造を単純に教わるのではなく、財務諸表を鏡にして企業の実態を把握します。企業の収益性や成長性を分析する際に、財務諸表の中に映される競合企業との明確な違いについて、なぜかを突き詰めると、その企業の強みの源泉となる戦略に気づきます。MBAで学ぶ前の私は、戦略と財務を別の物として捉えていましたが、優れた戦略は財務諸表に表れることを理解した瞬間でした。
もう一つ、藤原雅俊先生の戦略分析では、自身が陥っていた思考の弱みに気づき、戦略的思考の重要性を学びました。それまでの自分は、業績の良い企業のビジネスモデルを参考にする際に、展開している事業を見て「自社でも展開できそう」と表層的に捉えていました。しかし、この授業では、戦略の因果関係を「Why(なぜ)?」をもとに連鎖的に掘り下げていきます。そうすると競争優位性が網の目のように複合的な要因で築かれていることや、競合他社には真似したくでもできない決定的な要因が存在していることに気づきます。
このように、理論に加え、戦略を組み立てるうえでの思考プロセスを身につけられたのは意義が大きいです。

多様な仲間との議論による学びの定着と発想の拡がり

それぞれの授業で、少人数でのグループワークを通じたケース分析や企業への戦略提案の機会が多くあり、学んだ理論や思考プロセスを定着させる機会が多くあります。多様な産業出身の社会人や留学生、新卒生がいて、それぞれのプロフェッショナルな知見に基づいて議論をするので、新しい発想に刺激を受けています。
社会で実務経験を長らく積むと、専門性が高まっていく分、どうしても考え方や解決の手法が固まってしまうような気がします。経営分析プログラムでは、理論を徹底的に掘り下げ、深い議論を通じて、その枠組みが拡がる経験ができることを、これからMBAを目指す皆さんにお伝えしたいと思います。意思決定に新たな判断軸が加わったり、思考の引き出しが増えて、実践の場に戻れることは、ビジネスパーソンにとって得難い時間になると思います。
今後は、一橋大学MBAでのネットワークを活かし、培った知識や思考力を会社に持ち帰って、観光を通じた地域の発展に貢献したいと考えています。


グループセッションを終えて。グループセッションを終えて。

(2023年4月掲載)