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何 格尓(ホー グゥーワ)特任講師が、国際ビジネスの世界最高峰AIB学会で受賞②

2023年09月07日

Academy of International Business(以下AIB)において、40歳以下の若手研究者を対象とした研究論文のコンペティション「Alan M. Rugman Young Scholar Award」で最優秀賞を受賞しました。

受賞論文について -組織の志向的な変化-

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国際経営学会AIBの受賞式にて

今回、受賞した論文は博士論文の最終章で、新興国企業に買収された先進国の企業について、その買収により組織がどう変わるのか、というところに注目をしています。具体的には、家電量販店のラオックス、アパレルのレナウン、元三洋電機の白物家電事業のアクア、東芝の白物家電事業の東芝ライフスタイルの4つの事例を対象として研究しています。調べるにあたり、従業員へのインタビューや企業に関する新聞記事、就職・転職の口コミサイトでのコメントなどの情報を集めました。特に転職サイトのコメントでは、企業のトップレベルの考えではなく、現場の社員の考えが分かりますし、新聞記事ではメディアが企業をどう観察し、伝えているかを知ることができます。このように複数の視点からのデータを集めて、その組織の変化について自分なりの仮説を構築しました。新興国の企業に買収された先進国の企業は、その組織の考え方や動き方が変わり、「買収前と比べてアントレプレナーのような志向が高まった」という発見です。また、伝統的な日本企業はリスクを嫌がるというのが一般的ですが、買収された日本企業は被買収前に比べて組織が革新的になっていて、リスクテイキングの志向性も強まっています。私の研究で確認できたこととして、中国企業の傘下に入ったあとには、彼らがリスクを恐れずもっと冒険的な投資をするようになっていったことが分かりました。中国の本社から、ビジョンが提示され、それと同時に投資ももらえて、たとえ失敗しても再挑戦できるようになりました。しかも、中国の本社は、買収した子会社へ直接的に細かい干渉はせずに、グループとしてのビジョンを掲げ、ノルマではなく戦略上の目標を示すという姿勢で接しています。細かい指示ではなく、子会社への期待という意味でのプレッシャーが日本の会社のトップマネジメントにあったというのも、組織の志向性の変化の要因となっています。

受賞論文について -仕事のスピード感の変化-

製造業については、中国の本社との戦略上のコーディネーションだけではなくて、毎日の業務においても連携して進めなければならないことがあります。例えば、日本で研究・技術開発を行い、中国側にその製造ラインがある場合、現場の社員も含めて、品質や納期対応のための調整が必要になります。こうした日々のコーディネーションに関して、中国側では何でもスピーディーに進める一方、日本側はスピードにはこだわらず、品質を重視していました。当初はやり方の違いで、両者の意見が折り合わないという対立がありましたが、中国の本社に合わせ、日本側が品質を保ちながらスピードを上げるようなマネジメントを模索・実践するようになりました。中国側がスピードを重視するという点に関しては、新興国と先進国の違いにあると考えています。数年に渡りこうした研究を続けてきましたが、次の目標としては、博士論文として書いた第一章から今回受賞した最終章までの論文を整え直して、国際経営研究のトップジャーナルに投稿しようと考えています。

学生の皆さんへ

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中国甘粛省敦煌市の鳴沙山にて

私自身、最初から研究者の道へ進もうと決めていたわけではなく、修士課程を修了後は一般企業に就職しようと考えた時期がありました。企業の面接で、「学生時代に一番頑張ったことは何ですか?」とよく質問されますが、企業側が期待している回答は、協調性のエピソードやリーダーシップ、部活動といった話です。しかし、私はそうした話はできなかったんですね。それがきっかけで、私はこれからどういう風に生きていこうか、何をやりたいんだと改めて考えてみたときに、「自分が生きているこの社会の真実」について、自分なりの答えを導き出してみたいと思ったんです。それこそが自分の気持ちに誠実になれることで、学者として面白いと思うことを研究するのが、自分に一番合った道だと気づきました。ですので、学生の皆さんには、しばらく目標を見つけられなくても、何かに挑戦してそこで上手くいかずに落ち込んでも、後から考えるとそんなに大したことではない、というのをお伝えしたいです。むしろ、目標を一生懸命探してそれに向かうプロセスにおいて、自分がどのような人間で、人生においてどのように時間を使いたいかということも分かってきます。人生はあっという間ですから、いろいろトライしてみて、自分にとって一番有意義な時間の使い方をしてください。

 

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