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何 格尓(ホー グゥーワ)特任講師が、国際ビジネスの世界最高峰AIB学会で受賞①

2023年09月07日

Academy of International Business(以下AIB)において、40歳以下の若手研究者を対象とした研究論文のコンペティション「Alan M. Rugman Young Scholar Award」で最優秀賞を受賞しました。

研究成果:何 格尓(Geer He)

"Enhancing entrepreneurial orientation through inter-organizational matching: Insights from advanced market firms under emerging market ownership"

Academy of International Business(AIB)


 

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私の研究の専門領域は、国際経営論、経営戦略論、経営組織論です。現在は、イノベーション研究センターに所属し、イノベーションリサーチセミナーで担当教員の一人として、博士後期課程の学生の研究指導をしています。私自身、今年の3月に経営管理研究科博士後期課程(博士・商学)を修了したばかりで、先生というよりは、先輩から後輩に向けてサポートするという気持ちの方が強いかも知れません。

今回受賞した「Alan M. Rugman Young Scholar Award」を主宰する国際経営学会AIBは、この領域のトップジャーナルを発行している学会で、まさか自分の研究が評価されるとは思いも寄らず、いま改めて受賞の喜びを噛みしめています。今回、ポーランドのワルシャワ経済大学の由緒あるホールで、授賞式が執り行われました。例えるなら、一橋の兼松講堂のようなところで、会場には世界各国からの錚々たる研究者の方々がおられました。私を含め5名のファイナリストの名前がスクリーンに映ったときには、もうこのあと自分の名前は出てこないだろうと思い、その投影を記念写真としてカメラに収めました。そのような中で、自分の名前が最優秀賞として呼ばれて、大変驚くとともに、博士論文から続けてきた一連の研究を振り返り、努力してきたことに対して確かな結果を得られたと感じています。

研究者への道 -経済学から経営学へ-

私は、中国の深セン市の出身です。深セン市は中国の経済特区で、私の実家の周辺には日本企業も含め多くの外資系企業があります。その影響もあって、以前から海外に強い関心を持っていました。大学は、華南理工大学の経済貿易学部で金融を専攻し、在学中にアメリカのカリフォルニア大学リバーサイド校に半年間の交換留学に行きました。そこには、さまざまなバックグラウンドを持つ学生が世界中から集まっていて、そこで十年来の友人となる日本人の留学生に出会いました。

この日本人の友人ができたことで、日本に対して興味が湧き、中国に戻った後も日本語の勉強を続けました。日本語を勉強するために日本のドラマや映画をたくさん観ましたし、それらから日本の社会や文化についても多くの知識を得ました。そこからさらに日本企業の経済活動に興味、関心が湧き、学部卒業後は日本で経営学を学ぼうと決心します。日本で経営学を学ぶにはどこの大学が良いかと友人に尋ねたところ、一橋大学を大いに勧められたのがきっかけで今に至ります。当時、私は経済学部で金融を専攻していましたが、金融はとても複雑な数学のモデルで解釈や説明をするのですが、数字に対するセンスが悪かったんですね。それもあって数字ではなく、「物事の質的な側面を見ること」のほうに興味が湧きました。一言でいうと、経営学は質的な側面から、経済活動や企業の行動を見ることができてとても面白く、私はその道を目指すことにしました。

博士課程 -初めての学会に参加して-

こうして一橋に入学して、友人から一橋を勧められた理由を実感します。一橋では、博士課程の全学生が、国内外の学会へ参加する際には、充実した支援を受けられます。この支援を受けて、私も博士課程1年生から学会に参加しています。私が初めて学会に参加した際には、発表した研究について多くの意見をいただきました。優しいコメントもあれば、厳しいコメントもありました。自分の考えることとは矛盾している意見もあり、自分の論文の方向はどちらに行くべきなのかすごく悩み、自信を失いました。そのときに、ゼミの指導教員であった福地宏之准教授に、「どの先生の意見に従うべきか」と相談してみたら、あまり周りの人に流されずに「自分の主張がなぜ正しいか、それを周りに説得する」のが良いと、アドバイスをいただきました。それからは、研究の観点を明確にし、なぜこう言えるのかを、論理とエビデンスで示すようにし、博士論文の一章を書き上げて国際査読誌で掲載できました。そこから自信をつけて、自分が言いたいことをしっかりと伝えられるようになって、今では人の意見に左右されずに、自分の研究と真っすぐに向き合えています。博士課程の段階でこの認識ができたのは、福地先生のアドバイスのおかげですし、とてもありがたいと感謝しています。実際には、自分の考えを周りの意見に流されずに主張するというのは、すごく勇気のいることだと思います。当時、私はまだ学生でしたし、偉い先生方の意見なので、すべてを鵜呑みにしていて、自分の考えを伝える勇気はなかったのですが、地位の差ではなくて、研究者として平等な立場で意見を言うことができるようになりました。今は学会でいろいろなコメントがあっても、その場でちゃんと自分の考えを伝えることができます。そこで一人前の研究者に向けてひとつ成長することができたと思います。

 

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