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ワークショップレポートを振り返る―経営分析プログラム修了者座談会(2023修了者)―①

2024年04月18日

2023年度3月に経営分析プログラム(MBA)を修了された、企業派遣の内田光さん、金グリンさん、西尾紀彦さん、山越千佳代さんに、「ワークショップレポートを振り返る」というテーマで、ワークショップ担当教員の坪山雄樹准教授より、MBAの総括と後輩の皆さんへ向けたメッセージを伺いました。研究テーマを見つけるところから、苦労したこと、完成した時の達成感、そして経営分析プログラムの学びを経ての今後の抱負などについて、大いに語り合い、楽しい座談会となりました。


 

――(坪山)企業派遣でフルタイムのMBAで学ぼうと思った経緯やきっかけ、またどのような問題意識を持ってMBAに入られましたか。

内田さん
きっかけは社内公募制度です。将来的に企画業務に携わりたい人は申し込んでくださいという案内があったんですね。私はこれまでずっと営業をやってきて、営業も楽しいけれど、会社に与える影響としては施策や戦略を考える方をやってみたいなと思い、応募したというのが一番のきっかけです。

――(坪山)なるほど。では入学してみて修士1年の時はどうでしたか。

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内田さん
最初は考える間もなく、ひたすら詰め込んでつめこんで、という感じだったのですが、授業で学んだあとで夏休みなどに会社へ戻って本部で仕事をした時に、「こういう考え方だったんだ」と実務と少しつながった感じがしました。国立キャンパスの授業以外に履修できる、千代田キャンパスの経営管理プログラムや金融戦略・経営財務プログラムの授業も受けたのですが、国立とは雰囲気も違ったりして、いろいろ受けられるのは非常に良かったなと思いました。

――(坪山)夏休みは仕事に復帰されていますが、それは良かったですか。それともその間もっと勉強させて欲しかったですか。

内田さん
どちらもですね。修士1年の夏は、大学で学んだことがどうやって生きてくるのか分からないところで勉強を続けるよりも、多少実務につながるのを早めに経験できたので良かったと思います。ただ、修士1年の冬から春にかけては仕事に復帰するより、2年次のワークショップに向けて時間が欲しかったなと思いました。

金さん
私の場合は、会社から企業派遣制度を利用しMBAで学べる機会があり、そこであなたがやりたいことはあるかと聞かれたのです。私は日本の大学は詳しくなくて、その時に初めて一橋大学の経営分析プログラムのコースについて調べました。そこで、学んだ知識が実際に活用できるよう、「理論と実践の往復運動」という教育方針があることを知りました。いままでは実践を中心にやってきたというのもありますし、改めてパワーアップできる機会とも思い、手を挙げました。一橋で学ぶことについて前向きに捉え、面白そうだと思ったわけです。

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西尾さん
私の会社では毎年MBA企業派遣の社内公募があり、私もその制度を利用してHUB(一橋ビジネススクール)の門をたたきました。若手社員であった入社5年目ごろにMBAを検討したことがあったもののタイミングがあわず、今回、入社14年目でのチャレンジとなりました。MBAで学び直したいと思ったきっかけはコロナですね。営業スタイルもどんどん変わっていきましたし、社会的にもビジネスの在り方が変わっていく中で、果たしてこのままでいいのだろうかという課題意識が強くなりました。在宅勤務も増えた関係で勉強できる時間も多くなり、MBAにチャレンジするにはいい機会だと思ったわけです。働きながら夜間に学ぶという選択肢もありましたが、やはり集中してフルコミットができるのが全日制のメリットだと思いました。
企業派遣に応募したもう一つの理由として、会社での自身の評価を知るためということもありました。もし社内選考に落ちたとしてもフィードバックはあるでしょうし、合否に関わらず、これからマネージャー層を目指していく中で何が自分に足りていないかを知るきっかけにもなるだろうと思いました。

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山越さん
私も社内公募制度を利用しました。MBAを目指そうと思ったきっかけは2つあります。応募当時は入社10年目でしたが、一つ屋根の下で社員が働くような企業で、本当に社内のことしか知らなかったんですね。それで外の世界に行って揉まれたいと考えました。社会人10年目で一回経験しておくといいのではないかというのが個人的な理由です。社会的にもビジネスの環境が変わってきている中で、社内の意識も変わらなければならないという危機感を覚えたところもありました。また自社では企業派遣でMBAに行ったのはこれまで全員男性で、初めて女性がMBAに行くことになりました。これから女性活躍と言われている時期ですし、私のように海外のバックグラウンドを持っている派遣者は過去にあまりいなかったので、会社としても何か期待を持っているのかなと思いました。
修士1年のときは、いい意味で期待していたことと、学んだことのギャップはなかったです。私は学部では言語学、教育学が専攻で、経営学については一切勉強してこなかったので純粋に楽しかったですし、どれも勉強になりました。また、学術的なインプットを受ける以外にも、年齢もまちまちで多様なバックグラウンドを持った人とのグループワークがあり、チームビルディングやマネジメントというところも鍛えられたかなと思います。

――(坪山)ワークショップの配属が決まりレポートを書き上げていく段階で、最初大変だったのはテーマ決めだったと思いますが、どのようにテーマにたどり着いたのでしょうか。

山越さん
まず前提として自社の事例を扱ったものにしたいと思いました。MBAの修了後に社内への提言やフィードバックをする機会があることを踏まえると、自社の事例を扱った研究をしたほうが、より意味のあるものを持って帰れると思いました。最終的に扱ったのは、自社の若手退職者がどういったきっかけ、理由で転職、退職を決意して、どのような感情、行動を経ていったかというプロセスについての研究です。私はMBAの学びの中で「組織」について興味が湧きましたが、中でも特に働く個人について関心があり、このテーマになりました。

西尾さん
私の場合は執筆も大変でしたが、テーマ決めに最も苦労したなという思い出があります。人事領域での研究を行おうと考えており、社員のパフォーマンスマネジメント全般に関心があったのですが、これは風呂敷を広げ過ぎたと思い直しました。実力以上のことにチャレンジすることに意味があるとは思うけれども、今の力量の中でやり切ることも大切と考え、研究のスコープを見直しました。その結果、社内公募制度が個人のキャリア自律に対してどのような関係があり、アウトプットである成果へどのような影響を及ぼしているのか、という点に絞りました。

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金さん
私は、イノベーションに関心があり、先行研究の文献をたくさん読んでいましたけれど、自身が知りたいと思っていたことは、だいたい研究がされていて目新しさがなかったんですね。なので、ここでどのようなことをやると良いのかと悩み、2つの軸で考えました。まずイノベーションや新規事業を深堀していくと自分の勉強につなげる必要があるということと、もう一つは世の中の役に立ちたいということでした。まずは、イノベーションを成功に導く成功要因について調べました。成功要因は沢山あり、実証研究でもその効果が明らかになっていましたけれど、企業は1つだけではなく多方面からイノベーション実現のために励んでいます。そこから、成功要因の組み合わせとイノベーション成果の結びつきはどうだろう、というのに気づいていったというところです。この組み合わせを定量的に分析する手法は、質的比較分析(QCA)といい、授業で学んだものでした。

――(坪山)マーケティングの授業がちゃんと生きたということですね。

内田さん
私は、最終的には地方銀行の新規事業の創出プロセスの分析をテーマにしました。2年次の最初に出したワークショップの志望動機書では、コンピテンシー分析による営業職員の適性や過去と今で求められるコンピテンシーの違いが世代、時代が変わっていく中でどう変化するのか、そもそもしないのかというところを考えていました。その後、銀行間の合併なども、自分のなかで急にホットな話題になってきましたが、そもそもMBAに入るときの研究計画書で書いていた、「事業の多角化を進めていく中での人的資本管理をどうするのか」というテーマもずっと考えていました。銀行も多角化し、新規事業もやっていかなければならない。自分はやはりそこに興味があって、徐々にテーマが戻っていったという気がします。

――(坪山)皆さんは、ワークショップ以外でも勉強会をされていたと伺いました。

金さん
そうですね。この4人で、研究テーマが決まるまでは、週一で集まって壁打ちみたいな勉強会をやっていました。

西尾さん
自分の研究について聞いてもらうのも大切だったのですが、それにも増して、メンバーがどういう思考回路で研究を考えているのか、というのを聞けたことが実は良かったと思っています。

金さん
自分はこれで進められそうだと思っても、皆さんが率直な意見を言ってくださるのが良かったです。ここは褒め合う場じゃないですからね。

 

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