HUB-SBA MAGAZINE

「経営分析プログラム」の魅力――藤原雅俊教授に聞く ②

2022年10月25日

経営は論理、その論理を徹底的に磨き上げる2年間

国立キャンパスの全日制MBA「経営分析プログラム」は2018年度にスタートしました。多様性を尊重し、様々な特色を持つこのプログラムの魅力について、「戦略分析」を担当する藤原雅俊教授に聞きました。

理論と現実の往復運動を実践する

――経営分析プログラムの授業にはどんな特徴がありますか。

経営分析プログラムの多くの授業では、理論をベースにしたディスカッションが重んじられています。ディスカッションをする上で私が心がけていることは、「正解」を用意しないということです。私が「正解」を持ってしまうと、学生はつい「先生が考えているのはこのあたりのことではないか」と「正解」に寄せようとしてしまいます。しかしそれでは経営の本質に迫る議論になりません。本当に大切なのはそれぞれの経験をもとに、それぞれの重んじる優先順位でものごとを考え、それを皆にぶつけ、議論を深めることです。

グループワークが多いのも特徴です。講義ごとに様々なテーマが与えられ、そのテーマについてグループ単位で検討して発表し、クラス全体でディスカッションするといった具合です。受講生は常に複数のテーマを抱え、講義ごとに異なるグループで議論をしています。グループはランダムに構成され、社会人、新卒、留学生が、それぞれの価値観をぶつけ合いながら、よりよいものを作っていこうと文字通り没頭しています。こうした多様性も経営分析プログラムの良さだと私は思っています。

ここ数年は、社会人経験者が4割強、新卒が6割弱、そのそれぞれに海外籍の方が入っている状況です。5年一貫生を含む新卒生は、主に金融や会計などの分野でフレッシュな知識を武器にテクニカルな分析をリードしてくれます。一方で社会人受講生は、多様な経営理論に当事者としての視点を加えてくれますし、留学生の価値観は日本で生まれ育った学生にはないものです。多角的な視点を持ち寄ることは、議論を深めていく上で欠かせないものになっています。

――藤原教授が担当されている「戦略分析」について、その内容を教えてください。

藤原教授
2022年度「戦略分析」受講者の皆さん。
当日のゲスト講師(前列中央)とともに。

「戦略分析」は秋冬学期の授業で、春夏学期の「経営戦略」の履修を前提としています。「戦略分析」はケースメソッドと事業提案を柱としています。ケーススタディでは、半年間の講義の中で3〜5本ほどのケースを取り上げます(2022年度はダイキン工業、ノキア、リクルート、フィル・カンパニー)。このケーススタディの対象企業とは別に、実際の企業に対する事業提案・戦略提案をグループワークで行なっています。

ケーススタディにおいては、実際に各企業でなされた戦略的な意思決定について、なぜそのような意思決定がされたのか、また、なぜそのケースではうまくいったのか、あるいはうまくいかなかったのかについて、クラス全体で討議し、理解を深めていきます。各ケースとも、その戦略の策定または実行に関わった当事者をお招きして、ディスカッションに加わっていただくので、討議の迫力が違ってきます。これにより、単に外で起きている現象として見るのでなく、ケースが学生にとって生きた学びになるのではないかと思います。

事業提案・戦略提案においては、協力企業と連携して、グループごとに事業や戦略の提案を行ないます。春夏学期の「経営戦略」で学んだ理論を実践に落とし込むという経験をしてもらうのです。提案に対する関係者の方のご意見も聞きながら、私たちが日頃から大切にしている「理論と現実の往復運動」を濃密かつ集中的に行ないます。

ケーススタディの対象とするケースや、事業提案の協力企業は、毎年大きくは変えていません。しかし、学生の議論の中身や各グループの提案は毎年異なります。経営現象の背後にある論理構造を丁寧に読み解き、解きほぐしていくという過程では、それぞれの受講生独自の視点とバックグランドが大きく影響するからです。特に事業提案についてはそれが顕著です。例えば、海外事業、社会課題の解決に向けた事業、最近ではXaaSに着眼した事業の提案など多様です。様々な提案を、私自身も興味深く楽しんでいます。

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